経営者が押さえるべき主要な法務・税務
M&A(企業の合併・買収)は、単なる企業の売買ではなく、法務や税務の観点で多くの論点を含む「高度な経営判断」です。
とくに中堅・中小企業のM&Aにおいては、経営者自身が最低限の法務・税務知識を持っておくことで、トラブルの予防や意思決定の精度が大きく向上します。
本記事では、M&Aの基礎知識として経営者が押さえるべき主要な法務・税務のポイントをわかりやすく解説します。
M&Aにおける法務の基本論点
契約関係の承継
- 株式譲渡:会社自体は変わらないため、原則として契約はそのまま有効。
- 事業譲渡:契約主体が変わるので、契約相手先の同意が必要になる(重要顧客との契約などに注意)。
表明保証
- 売り手が、企業の財務・法務状況に誤りがないことを「保証」する条項。
- 万が一虚偽があった場合は、補償請求の根拠となる。
知的財産・許認可・労務
- 商標・特許・著作権の登録状況やライセンス契約の名義確認。
- 許認可の名義変更や承継可否、従業員との雇用契約の確認も重要。
コンプライアンス・訴訟リスク
- 過去の違法行為や係争リスクの有無を把握(デューデリジェンスで確認)。
- 環境法や独禁法、贈収賄などの国際規制にも注意。
M&Aにおける税務の基本論点
スキームごとの税務影響(株式譲渡 vs 事業譲渡)
- 株式譲渡:譲渡益に対して所得税・住民税がかかる。
- 事業譲渡:法人税・消費税の課税対象となる資産もあり、慎重な検討が必要。
簿外債務・過年度税務リスク
- 未計上の退職給付債務や税務調査で指摘される可能性のある過去の処理がないかを精査。
- 繰越欠損金・税効果会計の扱い
- 企業の買収時に繰越欠損金が引き継げるかは一定の条件がある。
組織再編時の適格要件
- 合併や会社分割を行う場合、税制適格となるためには要件を満たす必要があり、満たさないと多額の税負担が生じることも。
経営者が注意すべき実務ポイント
- 税務デューデリジェンスは初期段階から計画する
- 許認可・契約関係の承継有無を整理しておく
- 顧問税理士だけでなく、M&A専門の税務・法務の知見を活用
- 表明保証の内容・範囲は必ず精査
- 譲渡後も税務調査や訴訟の責任が残るケースがあることを理解する
ロタンダコンサルティングの支援
当社では、M&Aの初期段階から法務・税務の専門家と連携し、案件の全体設計・DD・契約支援・統合支援までを一気通貫で提供しています。
中小企業特有の状況にも柔軟に対応し、「守り」と「攻め」のバランスをとった実践的アドバイスが可能です。
まとめ
M&Aにおける法務・税務の理解は、経営者の“目利き力”そのものです。
専門家任せにするのではなく、最低限の基礎知識を持つことで、自社にとって最適な選択と交渉が可能になります。
リスクを最小限に抑え、確実に成果を得るための第一歩として、法務・税務面からのM&A理解を深めていきましょう。