会社を高く売却するための具体戦略
企業の売却を検討する際、「できるだけ高く売りたい」と考えるのは当然のことです。しかし、買い手の評価は単に業績だけで決まるわけではなく、売却の準備や進め方によって大きく変動します。実際に、同じような規模・業績の会社でも、売却価格に数千万円〜数億円の差が出るケースも少なくありません。その差を生むのが「売却前に仕込んだ戦略」の有無です。
本記事では、会社をより高く売却するために重要となる5つの具体的な戦略について、実際のM&A事例にも触れながらご紹介します。売却を「待つ姿勢」ではなく、「戦略的に準備する姿勢」で進めることが、最終的な成果を大きく左右します。
戦略①:利益を最大化し、収益モデルの安定性を示す
買い手が最も重視するのは「この会社はどれくらい利益を生み出せるか」という点です。直近の決算だけでなく、過去3年分の推移や、利益率の安定性が見られます。特に注目されるのがEBITDA(税引き前・利払い前・償却前利益)です。M&A市場では、企業価値をEBITDAの◯倍という形で評価する手法が一般的だからです。
売却を1〜2年先に見据えるなら、赤字部門の整理や価格戦略の見直しなどを行い、利益率を改善しておくことが大きな武器になります。ある製造業の中小企業では、売却の2年前から不採算事業を縮小し、利益構造をシンプルにしたことで、当初想定の1.7倍の価格で売却が成立した例もあります。
戦略②:属人化の排除と経営の見える化を進める
買い手にとっての最大の不安は「経営者がいなくなった後、この会社はうまく回るのか?」という点です。業務が経営者個人のノウハウや関係性に依存していると、それがリスクとみなされ、評価が下がってしまいます。逆に、マニュアルや体制が整っており、経営者が不在でも機能する仕組みができていれば、それは“仕組み資産”として評価されます。
例えば、営業の引き継ぎ資料や主要取引先との関係性が文書化されているか、管理会計の導入により業績が数値で管理されているかなどが評価ポイントです。特に中堅・中小企業においては、「経営者がいなくてもまわる会社」への転換が、高値売却へのカギを握ります。
戦略③:無形資産の価値を整理・可視化する
知的財産(商標・特許)、ブランド認知、ウェブサイトのSEO評価、SNSのフォロワー数、そして採用力や社員の定着率など、目に見えない資産は、うまく整理すれば高く評価されます。
たとえば、あるEC事業者はサイトのドメインパワーと継続顧客のデータベースを明示的に開示したことで、単なる在庫と売上の数値以上の高評価を獲得し、結果として希望価格を超える条件での売却が実現しました。こうした資産は決算書に表れないため、事前に「棚卸し」しておくことが重要です。
戦略④:理想の買い手像を明確にし、ターゲットを絞る
高値で売却するためには、単に「買ってくれる相手」を探すのではなく、「もっとも自社を必要としてくれる相手」を見極めることが大切です。たとえば、自社が新規事業を始めようとしても時間やコストがかかる企業にとっては、同業種の会社を買収することで一気にシナジーが得られることがあります。そうした企業にとっては、自社の価値は“数字以上”になります。
戦略的に相手を選ぶことで、買い手同士の競争も生まれ、結果として売却価格が上がる可能性が高まります。
戦略⑤:専門家と連携し、情報開示と交渉を最適化する
最後のポイントは、「一人で売らない」ことです。M&Aは情報戦・交渉戦の側面が強く、専門的な知識と経験が結果を大きく左右します。
たとえば、最初の提示価格が高くても、デューデリジェンス(買い手による詳細調査)を経て条件が大きく引き下げられることは珍しくありません。そのときに適切に反論し、条件を維持・改善するには、M&Aアドバイザーや弁護士、会計士との連携が不可欠です。
ロタンダコンサルティングでは、500件を超えるM&A支援経験を通じて、売却側の立場に立った「守りと攻めのバランスが取れた支援」を提供しています。
まとめ:高値売却は「準備」と「戦略」の差で決まる
会社の売却価格は、単に数字で決まるものではありません。事前にどれだけ準備をし、どんな戦略を立て、どんな買い手と出会うか。その一つ一つの積み重ねが、数千万円、場合によっては数億円の差となって表れます。
「いつか売却するかもしれない」そう思ったタイミングが、準備のスタートとして最も適切な時期です。まずは自社の状況を棚卸しし、何から着手すべきかを把握することが、高値売却への第一歩です。ロタンダコンサルティングでは、事前準備から交渉、クロージングまでを一貫してサポートし、最適な条件でのM&Aを実現しています。会社の未来をより良い形で次に引き継ぐために、ぜひお気軽にご相談ください。