スタンドアローン・イシューの課題と対応策
M&Aにおいて、買収した企業をグループ内で“独立して運営”する際に生じるさまざまな課題を「スタンドアローン・イシュー」と呼びます。特にPMI(買収後の統合プロセス)において、この問題を事前に把握し、対応策を講じておくことは非常に重要です。
本記事では、スタンドアローン・イシューの意味と具体的な内容、そして解決に向けた実務上のポイントを解説します。
スタンドアローン・イシューとは?
買収先が、これまで親会社やグループに依存していた業務・機能・システムを、自立して運営できるようにする過程で発生する諸課題のことです。
M&Aにおける典型的なスタンドアローン・イシューの例
- 会計・財務システムがグループの共通インフラに依存していた
- 人事制度・給与体系が親会社に統合されていた
- 調達・物流をグループ購買で行っていた
- 情報システム・IT資産が一体化されており、独自運用できない
- ブランドや商標を親会社名義で利用していた
主な課題領域
- 経理・財務体制の自立
会計システム、資金管理、決算体制を単独で構築する必要がある - ITシステムの切り離しと再構築
ERP・販売管理・顧客管理などのシステム分離、データ移行、セキュリティ整備が必要 - 人事・労務機能の再整備
評価制度、給与処理、労務管理を買収先単体で設計・運用できるように - 業務委託契約・親会社保証の切替
親会社が提供していたサービスや保証を新契約に変更し、リスクの独立性を確保 - ブランド・知財・契約名義の調整
ブランドを親会社から切り離すか、ライセンス契約を締結するかを判断
対応のポイント
- DD(デューデリジェンス)段階で、依存関係を網羅的に洗い出す
- クロージング後の“移行プラン”を具体化し、体制整備のスケジュールを管理
- 経営者や部門責任者に「独立運営」の意識を浸透させるインナーブランディング
- 一部は段階的な移行も可。TSAs(移行サービス契約)の活用も検討
ロタンダコンサルティングの支援
当社では、スタンドアローン・イシューに対応したPMI設計・移行支援を数多く提供。財務・人事・IT・契約といった分野ごとに専門チームが、分離と再構築を現場レベルでサポートします。
まとめ
M&Aの成功は「買って終わり」ではなく、「運営できて初めて」成立します。スタンドアローン・イシューを軽視すると、統合後の混乱やコスト増に直結するリスクがあります。
実行前の見立てと、移行後の支援体制の整備によって、自立的な企業運営を実現しましょう。