契約交渉で押さえるべき実務のポイント
M&A取引における契約書交渉は、法務的なリスク回避だけでなく、取引条件や将来の信頼関係にも大きく関わる重要なプロセスです。特にM&A初心者〜中級者の担当者にとっては、「どこを譲り、どこを守るべきか」の見極めが難しい場面も多くあります。
本記事では、M&A契約書交渉で失敗を避けるために押さえておきたい実務ポイントを解説します。
交渉の前提:目的と立場の整理
- 交渉の目的は“リスクを管理しながら合意形成すること”
- 売り手と買い手は利益が相反するため、視点と優先順位を明確に
- 交渉前に「どこまで譲れるか」「譲れないポイントはどこか」を社内で整理しておく
失敗しないための5つの実務ポイント
① 表明保証・補償条項のバランス調整
- すべてを保証させると交渉決裂のリスク。重要性と影響度に応じて線引きを行う
- 開示例外リスト(Disclosure Schedule)の活用も重要
② 対価の構成と価格調整の条件を明確に
- クロージング時点の資産・負債の変動に対応する価格調整(Purchase Price Adjustment)を設定
- アーンアウト(業績連動支払)の場合は達成条件の明文化が必須
③ クロージング条件とスケジュール調整
- 許認可取得、第三者同意、従業員説明などの前提条件を過不足なく記載
- 過剰に複雑な条件設定は実行遅延の原因となる
④ コベナンツの適正設定
- 譲渡完了までの行動義務・禁止事項を明文化し、価値の毀損を防止
- 非競業義務や従業員引き抜き防止も慎重に設計
⑤ 紛争対応・準拠法・裁判管轄の合意
- 将来的なトラブル時の対応ルール(通知義務、協議、仲裁、管轄裁判所など)を明記
交渉を円滑に進めるための工夫
- 一気に詰めず、「優先度の高い論点から」段階的に進める
- 弁護士やFAとの事前連携を密に行い、現実的な落としどころを検討
- ドラフトの文言だけにこだわらず、「実務的な意味」と「交渉力学」で判断する
- 相手の立場や意思決定構造を理解し、交渉の“タイミング”を見極める
ロタンダコンサルティングの支援
当社では、M&Aの契約書交渉において、戦略的交渉方針の立案からドラフト精査、専門家との協議支援までを一貫して提供。“法務と経営の橋渡し”となる実務支援を得意としています。
まとめ
M&A契約書の交渉は、「守り」と「攻め」の両立が求められる高難度の実務です。事前準備と社内連携、専門家との連携を徹底することで、交渉力は飛躍的に高まります。
一つひとつの条項の背景と目的を理解し、自社にとって最良の着地点を見極めましょう。