表明保証の基本と実務ポイント
M&A契約において、最も重要かつトラブルの起点になりやすいのが「表明保証(Representations and Warranties)」です。これは、取引当事者が一定の事項について「事実である」と保証する条項であり、リスクの分担と責任の明確化を図る上で極めて重要な役割を果たします。
本記事では、法務・経営陣が押さえておくべき表明保証の基本的な考え方と活用ポイントを解説します。
表明保証とは何か?
- 契約締結時点やクロージング時点において、当事者が「ある事実が真実かつ正確である」と保証する条項
- 売り手が自社の状況を正確に説明することで、買い手の情報判断の前提を保証
- 万一虚偽があれば、契約違反として損害賠償請求の対象となる
典型的な表明保証の内容
- 会社の基本情報:登記情報、資本金、事業目的、会社の有効な存在
- 財務関連:提示された財務諸表が適正に作成されているか、重要な簿外債務がないか
- 税務関連:納税義務を適切に果たしており、税務調査リスクがないか
- 訴訟・法的リスク:現在・将来の訴訟や紛争、行政処分の有無
- 労務・従業員関連:社会保険の整備、労働契約・未払い残業代・訴訟リスクの確認
- 知的財産権:商標、著作権、ソフトウェアなどの所有権と使用権の正当性
- 取引先との契約:重要取引先との契約条件、解除リスクの有無
- 環境・規制法令遵守:許認可、コンプライアンス、業法順守状況
表明保証に関連する条項
- 補償条項(Indemnity Clause):表明保証が虚偽であった場合の損害賠償ルール
- 表明保証の期間制限(Survival Period):責任追及が可能な期間(通常は1〜3年)
- 限度額・免責額の設定:損害発生時の補償上限額や一定額以下の免責(ディダクタブル)
実務上の留意点
- 売り手側は「認識ベース」で限定的に記載したい(知りうる範囲、合理的努力ベース)
- 買い手側はできるだけ広範かつ明確な記載を求める傾向
- DD結果に基づいた「開示スケジュール(Disclosure Schedule)」の整備が重要
- 財務デューデリジェンス・法務レビューとの連携が必須
ロタンダコンサルティングの支援
当社では、表明保証条項の設計・交渉・開示対応に関するアドバイスを提供。リスクのバランスを保ちながら、紛争を未然に防ぐ契約設計を支援します。
まとめ
表明保証は、M&A契約における“信頼と責任”の土台です。買い手にとっては情報の裏付けを得る手段であり、売り手にとっては適切な責任範囲を定める防御策でもあります。
丁寧な事前準備と慎重な文言設計によって、双方にとって納得性の高い契約に仕上げることが成功への鍵となります。