M&Aスキームの選定における留意点
M&Aを実行する際、スキーム(取引手法)をどのように選択するかは、税務・法務・会計・実務面に大きく影響します。企業の財務・法務担当者は、それぞれのスキームの特性とリスクを理解し、目的に応じた最適な形式を提案・実行する役割を担います。
本記事では、M&Aスキームの選定において押さえるべき主要な留意点を解説します。
主なM&Aスキームの比較
スキーム | 主な特徴 | 主な留意点 |
---|---|---|
株式譲渡 | 株式を売買するシンプルな手法 | 簿外債務・過去のリスクも承継対象 |
事業譲渡 | 事業単位で選択的に譲渡が可能 | 契約・許認可・従業員の個別承継が必要 |
合併(吸収・新設) | 会社を一体化し法人を統合 | 会計・法務・文化面の統合作業が必須 |
会社分割 | 一部事業の切出しや統合に適する | 複雑な登記・労務処理、税務影響 |
株式交換・移転 | グループ再編やホールディング化に有効 | 法人構造が変わるため手続きが煩雑 |
スキーム選定の際の実務的な留意点
税務面の影響
株式譲渡では譲渡益課税、事業譲渡では消費税課税の可能性、合併・分割では組織再編税制の適用可否を確認
法務・契約の承継方式
事業譲渡の場合、各契約の名義変更や同意取得が必要となる。株式譲渡や会社分割は包括的承継が可能
許認可の継続性
許認可の名義・法人変更が関係する場合は、事前に所轄官庁の確認を行う(医療・建設・金融など)
従業員の雇用関係の扱い
事業譲渡では再雇用契約が必要となるため、従業員への説明と合意が必須
財務諸表やのれんの扱い
株式譲渡では連結上ののれんが発生し、減損リスクの評価も必要となる
PMIのしやすさ
統合後の業務システム、人事制度、会計基準などの統合のしやすさもスキーム選定に影響
ロタンダコンサルティングの支援
当社では、税務・法務・財務の専門家と連携し、M&Aスキームの初期設計段階から具体的なリスク分析と実行支援を提供しています。
まとめ
スキームの選定は「実行しやすさ」だけでなく、「統合後の成果」にも大きく影響します。経営目的に最も適した形式を選ぶためには、法務・税務・人事など多面的な視点が求められます。
制度的な要件と実務のリアルを理解し、M&Aをより安全かつ効果的に実行しましょう。